プログラミングスクールというボッタクリ情弱ビジネスについての所感

世間には「あこぎな商売」というのが結構あって、最近流行りのプログラミングスクールとかいうのはまさにその「あこぎな商売」の典型だろうと思う。昨今の流行りのワードを借りれば「情弱ビジネス」であり、はっきり言ってしまえばボッタクリである。

 

プログラミングスクールがボッタクリである理由は単純で、高額なプログラミングスクールなんかで配布される教材や講習内容なんかよりも圧倒的にクオリティが高くて実践的な教材がネット上には大量に溢れており、しかもそれらはほぼ無料で手に入るから。

 

例えば日本ではそれなりに名の通ってるIT企業が新卒向けに数千万(推定)のコストをかけて本気で制作し、実施しているエンジニア向けの研修内容や教材が、ネット上で普通に公開されている。しかも大量に。

 

研修資料まとめ.md · GitHub

 

莫大なコストをかけて雇った自社の新人向けの研修なわけだから、クオリティの低いものを作れば損失に直結するため本気で良質なものを作るインセンティブがあるし、現場投入後にちゃんと戦力になれるような、実務につながる基礎知識やスキルを厳選して教えられる。

 

しかもそれらをネット上に公開するということは自社のリクルーティングのための宣伝の一貫でもあるので、下手なものを公開して自社の評判を毀損しないよう、第一線のエンジニアに講習内容の策定や監修、実施に関与させている可能性が高く、それによって品質が担保されることになる。

 

一方でプログラミングスクールはどうか。

 

プログラミングを教えることで利益を得るというビジネスモデルであるということは、出来るだけ安く講習や教材を制作し、出来るだけ高く売ることで利益が最大化する構造になっている。これはもはや構造的な欠陥だと言える。それも致命的な。

 

例えば先に挙げた企業の研修レベルの講習内容や教材を提供しようと思えば、現場の第一線で活躍しているエンジニアを招集して教材の制作、スクールの運営に関与させる必要がある。開発の現場でプロジェクトの中核を担ってるようなエンジニアを、プログラミングスクールはどうやって集めるというのか? 現場に身を置く感覚から言えば、まあ無理だ。自社に教育すべき優秀な若手がたくさんいる中で、わざわざ外部のスクールで赤の他人にそんな労力を割くインセンティブが見当たらない。

 

GoogleMicrosoftのエンジニアとまでいかないまでも、日本のそれなりに開発力を売りにしている企業の、それもリードエンジニアクラスの単価の高いエンジニアを現場から呼び寄せて、講習をやらせたり、教材作成をさせるなんてことは、普通に考えて相当難しい。というかほぼ無理。

 

かくしてクラウドソーシング等に「プログラミングスクールの講師大募集!!」なる依頼が大量に溢れかえることになる。最近はどうか知らないが、登録だけして使っていない某クラウドソーシングの僕のアカウントにも、ある時期毎日のように前述したようなプログラミングスクール講師の依頼メールが送りつけられてきていた。

 

依頼内容は「教材の作成とマンツーマンでのレッスン」で時給2000円〜だとか。

時給2000円に飛びつくような、どこぞの誰か分からないようなエンジニアに教材を作らせ、マンツーマンレッスンさせて利ざやを稼ごうと企ててるわけ。

 

単価の低いエンジニアをかき集めて、1時間3000〜4000円ぐらいで素人に売りつけるようなビジネスモデル。それが今乱立しているプログラミングスクールの実態だと見ている。

 

そんなもんに高い金をぶち込むぐらいなら、最初の方に挙げた企業が無料で公開してる講習内容に沿って学習した方が圧倒的に効率良く、しかも実務で求められる知識やスキルが身に付けられる。

 

別に企業が公開する研修に限らないでも、無料の良質な教材は他にもたくさんある。

例えばデータサイエンスの世界で知らない人はいないAndrew NgっていうGoogle Brainの共同設立者であり、Baiduの元副社長兼主任科学者の人が設立したCourseraっていう世界的に有名なオンライン講座のプラットフォームがある。

 

Couseraではスタンフォード大学とかイエール大学とかの世界の一流大学や、GoogleとかIBMとかの一流企業が公開しているコンピュータサイエンスやらデータサイエンスやらの講習が基本無料で受けられる。

 

しかも講習によってはGCPと連携してて、無料でGCP上でインスタンス作って、サーバー立てたり、プログラム動かしたりする等の実践的なトレーニングが行えたりする。

 

全てが完全無料というわけではないけど、講習自体は無料で、認定証を発行してもらうのが有料だとか、一定期間を過ぎると有料になるとかなので、使い方次第では無料でいくらでも良質な講習が受けられる。

 

他にも、データサイエンスやデータエンジニアリングを学びたいなら、それこそKaggleでもやれば世界中のデータサイエンティストや機械学習エンジニアによって大量に公開されている分析コードやノウハウが無償で見放題だ。一銭も払う必要が無いどころか、万が一にも上位のスコアを出せれば賞金までもらえたりする。

 

というのがオープンソースという思想が根付いているコンピュータの世界の教育・学習における元来の世界観であって、むしろ高ければ高いほど質は下がり、最も質が高いものは無料であるという逆説的な側面があることを、エンジニア志望者には中々理解しずらいかもしれない。

 

世界の超一流の大学や企業やエンジニアによって無償で良質な教材やオンライン講習が提供されている中で、時給2000円の微妙なエンジニアが提供する数十万円のプログラミングスクールが乱立しているこのチグハグ感。

 

値段が高いのはそれだけの価値があるからだと思ってしまうのはただの錯覚であって、むしろ順番が逆。利益を上げるためには値段を高く設定しなくちゃいけなくて、値段を高く設定するためにはマンツーマンで教えるという立て付けにする必要がある、っていう発想で今のプログラミングスクールの形態と価格設定になってると考えた方が良い。

 

無限に複製可能な学習コンテンツでは高い値付けができないから、人件費という名目で単価を嵩上げしている。商売として成り立たせるために。ある種の人月商売。

 

というわけで、今自分がエンジニア志望の立場に逆戻りしたとしても、絶対にプログラミングスクールなんかには入らないし、今その立場にいる人にはそんなもんに課金しなくても無償でいくらでも良質な学習教材が入手できるんだってことは、一応言っておきたい。

 

とここまで書いて、じゃあ大学はどうなんだ?数百万するじゃないか?って話が出てきそうだけど、大学は大学を出たということがこの社会では結構な価値になるので、当然ケースバイケースではあるけど、まあその辺のプログラミングスクールと比較するようなもんではない。

 

そもそもエンジニアの実務の中では「必要な情報を無料で手早く入手すること」や「独学・自走」が求めらるので、プログラミングスクールに大金を払ってしまう人というのはそういう素養が無いんじゃないかと思い、もし自分が採用担当者ならプログラミングスクール出身者を名乗る人はあまり採用したくはないと思う。

 

なんで無料ですぐに入手出来るような情報を調査せずに、そんな金と時間を無駄に費やしてるんだ?的な印象を持ってしまう。

 

そういう意味でマイナスの実績にすらなり得ると思うので、個人的にはやはりボッタクリにしか見えない。